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握り飯ノスタルジィ

黒猫ベルは、サクの従姉妹のお姉ちゃんが
拾ってきた猫だった
よし子の元で飼われることになってから、
最初はチビ、チビ、と呼ばれていたが
首に鈴をつけていたので、
当時六歳だったサクが『ベル』と名付けたらしい
そのことはサクもはっきり記憶していた
ベルは、10歳になる手前で亡くなり、
それから、5年ほどして、
よし子も天寿をまっとうし
ベルと同じ墓地で静かに眠っていた

(まさかここでまた会えるだなんて、不思議だなあ)
サクはベルがすりついてくるので、くすぐったい気持ちになった

炊飯器から立ち上がる湯気に吸い寄せられるように
徳之介もテーブルにやってくる

サクは、よし子の作ってくれたおにぎりを頬張りながら
『美味しい…』と涙腺を緩ませた
サクが小学生の頃、両親の仕事が遅いとき、
たびたびよし子の家に上がらせてもらっていたことを思い出す

よし子は、白飯に塩とのりのシンプルなおにぎりを
サクのために作ってくれていた
サクはこの味が大好きで、2個も3個もたいらげていたのだ

『うまい握り飯だのう。よし子、礼を言う』
徳之介は、サクがゆっくり味わっているそばで
5個も6個も呑み込む勢いでガツガツと食べている
感動してるのに雰囲気ぶちこわしだ、とサクは思った

『…っとそれは良いのだが、サク。
己は、たった今、逃げだそうとしたな』
徳之介は、あぐらをかいている姿勢で
サクと向き合った

サクはきょとんとしていたが、
徳之介のこめかみがピクピク
揺れ動いているのに気づき、恐れをなした


☆シルビア☆
by adv39 | 2015-09-18 01:32